読唇術
2007-09-24


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昨日の予定が一日遅れの今日、稲刈りがスタートした。

機械もよく動き、田んぼもぬかることなく、まずは順調の滑り出し。

そうべえが刈り取ったもみを、おかるが軽トラで運び、乾燥機に移す。

ダクトの長さには限りがあるので、軽トラを畦ぎりぎりに止めないと、すんなり届かない。

稲刈り機のエンジン音で声が届かない。そうべえ、おかるに身振り手振りで「もっと畦によれ!」とサインを出す。

おかる、ぼ〜っとしてさっぱり動かず。

「○△×%*+&#!!!」

そうべえ、エンジン音の中で何やらはき捨てるように言うと、ぎりぎり稲刈り機を近づけて、モミを軽トラに流し込む。

おかる、不敵な笑みを浮かべ、そうべえにちかづき、耳元で叫んだ。

「お前さん、「もっと寄れって言ってんだよ、この!』っていったべ?」

「え?言ってないだろ、そんなこと・・・」

そうべえ、笑ってごまかそうするがもう遅い。

動きは鈍いが、おかるには、そうべえ限定の読唇術が備わっているのである。

微笑みあうそうべえとおかるの上では、青い空がさわやかに広がっていた。
[農家の事件簿]

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